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黄昏の岸 暁の天 4章1~2

2010-08-08 22:13


四章


   1

 |李斎《りさい》が夜半、目を覚ますと、|枕許《まくらもと》に人影があった。|牀榻《ねま》には隣室から月光が射し入り、虫の声が流れ込んでいる。
「……景王?」
 李斎が声を上げると、|俯《うつむ》いていたふうの人影は顔を上げる。
「ああ……|済《す》まない。起こしてしまっただろうか」
 いえ、と李斎は|呟《つぶや》いて、
「みなさんが探しておられました」
「うん。今日はちょっと逃げ隠れをしていたから」
「逃げ隠れ……?」
 李斎は問うたが、それ以上の返答はなかった。寝間の中に再び沈黙が降りる。虫の声が|涼《すず》やかに|響《ひび》いていた。やがて、人影は口を開く。
「泰麒はどういう方だった?」
 李斎は、|僅《わず》かにどきりとした。彼女はやはり、故郷を同じくする泰麒を特別な意味で気に留めたのだ、と思った。
「お小さくていらっしゃいました」
 李斎が答えると、夜陰から、くすりと笑い声がした。
「景麒と同じことを言うんだな。それでは説明になっていない、と言ってやったんだが」
 笑い含みの声に、李斎も|微《かす》かに笑う。
「本当に……そういう方だったのです。小さくて|稚《いとけな》くていらっしゃいました。とても無邪気な、けれど思いやりの深い方で」
「麒麟だものな」
「景王に似たところがおありでした」
「……私に?」
 李斎は頷く。
「とても気安い方だったのです。私などからすれば、ずっと身分の高い方なのに、少しもそんな様子がなくて。主上──|驍宗《ぎょうそう》様は、台輔には身分というものがよくお分かりでないのだ、とおっしゃっていました。確かに、身分を|嵩《かさ》に着ないというより、身分に頓着しておられないように見えました。景王もそういう方のようにお見受けします。|女御《じょご》や|女史《じょし》が、気安く御名を呼ばれているのを聞いて驚きましたが、ああ、台輔もそういう方だった、と」
 なるほどな、と苦笑する気配が黒い人影からする。
「そう……|蓬莱《ほうらい》には身分などと言うものはなかったから。いや、なかったわけではないのだけど、心情を超越するものではなかったし。女御と女史──|鈴《すず》と|祥瓊《しょうけい》は家臣ではなく友達だから。こちらでは身分を越えて友達になったりはしないものらしいけど」
「|大僕《だいぼく》もですか? 大僕も御名を呼び捨てになさいますね」
「そう。友達……という言い方は変かな。仲間、だから」
「仲間ですか?」
「国を支える仲間なんだし──そう……かつては|謀反《むほん》の仲間だった」
「謀反……」
 李斎が不思議に思って首を傾けると、人影が頷く。ひどく真摯な気配が立ち込めた。
「少し前、慶にとても|酷《ひど》い郷長がいたんだ。恐ろしい圧政を|布《し》き、民から多くのものを|搾取《さくしゅ》した。私はまだ登極して間がなくて、郷長を位から追うだけの権威を待たなかった。それで|虎嘯《こしょう》に手を貸した。虎嘯は郷長を討つために、圧政に怯えて郷長に対する非難を口にすることすら恐れるような民の間から同士を拾い上げ、長い時間を掛けて準備をしていた」
 言って、陽子は軽く身を乗り出す。月光がその横顔にあって、どこか痛みを|怺《こら》えているふうの真剣な表情が見てとれた。
「……戴では、そういうことは不可能なんだろうか」
 それが言いたかったのか、と李斎は胸を押さえた。
「……不可能だと思います……」
 口を開き掛けた陽子を、李斎は制す。
「おっしゃりたいことは分かります。民にその気があればできないはずがない、という。私も、不可能だという|言《い》い|種《ぐさ》がどれほど愚かに聞こえるかは重々分かっているのです。けれども、それでも不可能だと申し上げます……」
 李斎は|牀榻《ねま》の天井を仰いだ。牀榻の中には夏の夜気が込もっている。だが、李斎は未だに体の芯が凍えているような気がする。もう耳鳴りはなかったが、それでも凍えるような風の音が聞こえるように思う。
「私は少数の手勢だけを連れて、|阿選《あせん》の手から逃げ出しました。兵卒は押さえられ、|鴻基《こうき》に連行されたと聞いています。私の兵卒だけではない、他の将軍の|麾兵《ぶか》も同様で、それ以外にも阿選の許から逃げ出した官吏が多数おりました。それらの者は全て、追われることになったのです。驍宗様と泰麒を殺害し、王朝の|簒奪《さんだつ》を|企《たくら》んだ罪人の仲間として」
 李斎には、最初、事態は決して難しいことではないと思われた。
「阿選は、王と宰輔がなくなり、自分が国を預かったという体裁を取ってはいましたが、それで誰もが納得するはずもございません。事実、次第に阿選に疑いを抱き、やがては不満を抱くようになった者も数多くおりましたし、私は驍宗様を捜しながら、そういった者たちを集め、反阿選の勢力を作ろうと奔走もいたしました。ですが、何ひとつ巧くはいかないのです。まるで砂で楼閣を築こうとしているようでした。せっかく人を集め、組織を作っても、その中から不思議なほど脱落者が出るのです。作り上げた先から壊れていく……」
「そう……」
「脱落した者は、阿選に寝返るか、さもなければ姿を消していきました。やがて国土は沈黙しました。もはや有志を集めようにも、その所在を|掴《つか》むことができなくなったのです。捕らえられなかった反勢力は、深く地下に潜って阿選の手を逃れなければなりません。阿選に反意を抱く者も、不用意に目立てば周囲を巻き添えにしてしまうことを分かっています。ある|里《まち》に反逆者がいるとなれば、阿選は労をかけず、里ごと焼き払ってしまいます。今でも阿選を倒す機会を|窺《うかが》っている者は多いでしょう。ですが、そういった者同士が互いを見つけ、連絡を取り、手を携えることは不可能に近い……」
 しかも、と李斎は呟く。
「景王は戴の冬がどんなものだかご存じでしょうか。天地の理は傾き、頻繁に|災異《さいい》に襲われました。妖魔が出没し、民のほとんどは生き延びるだけで精一杯です。ことに、その年の冬をどうやって越えるか──それがもう全てなのです」
 その中で、辛うじて民がまだ生き延びることができているのは、|鴻慈《こうじ》のせいだと言われている。驍宗が、玉座について朝廷を|革《あらた》めるにあたり、初勅を発布するよりも先に行ったことがあった。王宮の中には国の基となる|里木《りぼく》がある。これを|路木《ろぼく》と言うが、驍宗はこの路木に願い、|荊柏《けいはく》という植物を天から得たのだった。
「荊柏……?」
「はい。荊柏は|荊《いばら》のような植物で、荒れ地でも放任したままよく育ち、春から秋までの長い間、季節を問わず白い花を付けます。花は落ちて|鶉《うずら》の卵ぐらいの大きさの実を結ぶのですが、この荊柏の実を乾燥させると、炭の代わりになるのです」
 炭は冬の厳しい戴にとって無くてはならないものだが、当然のように無限にあるものでもなく、民はこれを|購《あがな》わなくてはならない。だが、荊柏ならば田畑の隅に植えればよかった。それでたっぷりの実が取れ、干して蓄えておけば冬を|凌《しの》ぎ切ることができる。一家のぶんの炭を自ら作ることができる──これは戴の民にとって大きかった。
「もともと荊柏は黄海のみに育つ植物だとか。主上は路木に願って戴でも育つ荊柏を得てくださった。主上がお姿を消したあの春、国中の里木に荊柏が生りました。三年もしないうちに国中の至る所、荊柏の白い花の見えない土手はない、という有様になりました。それで民はこの惨状の中でも、なんとか冬を乗り切ることができているのです。民は鴻基におられた尊い方が恵んでくれた慈しみだと──それで、誰に言うともなく、荊柏を鴻慈と」
 そうか、と陽子は沈痛な声を|零《こぼ》す。
「……|阿選《あせん》が王なら、天命が尽きることもあるでしょう。しかしながら阿選は王ではありません。ただの逆賊ならば、寿命が尽きることもあるでしょうが、阿選は仙です。誰かが阿選を取り除かない限り、阿選が|斃《たお》れることはなく、阿選から仙たる資格を取り上げることができるのは、王か、さもなければ、王が斃れた後に残される|白雉《はくち》の足だけなのです。主上も台輔も亡くなられておられない、けれども所在が分からない。──そのせいで、この悪逆を止める摂理の一切が動かない……」
「それでは、戴の民には、自らを救う術がない」
 はい、と李斎は頷いた。同時に、|縋《すが》る李斎の眼差しを受けとめ、真摯に耳を傾けている陽子の様子を見ていると胸が痛んだ。李斎は助けてくれ、と言いたい。|驍宗《ぎょうそう》を探して欲しい、泰麒を捜して欲しい、できれば阿選を討って欲しい──。
 口を開こうとした時、陽子の静かな声がした。
「泰王が御無事なら、是非とも鴻慈を分けて欲しいところだな。……慶は貧しくて」
 言って、月のほうを見る。
「慶も北部は冬になれば寒い。特にめぼしい産物のない北部は、貧しい家が多くて、冬の炭代にも事欠くことがある。もともと戴ほど寒くはならない土地だから、冬に対する備えがあまりないんだ。壁は薄く、窓には|玻璃《はり》も入っていない。羽毛も毛皮も十分にはなく、かといって他のものに優先するほど重要事ではない。だから北部の民は、綿の衣服をあるだけ着込み、家族で抱き合って冬をやり過ごす……」
「そう……ですか」
「もちろん、炭のあるなしが生命に|係《かか》わるほどのことはない。真冬でも山野に入って、草の根なりとも掘ることができるから、慶の冬が民の生死を圧するほど厳しいわけではない。だから決して戴の冬と同列に語ることはできないのだけど、私は戴の北部の民を|不憫《ふびん》に思う」
「……そうでしょうね」
「戴の先王は、国庫こそは|蕩尽《とうじん》したが、政においてはしっかりした方だったと聞く。仮朝も同様に、よく運営されているようだったと景麒が言っていた。慶は逆だ。このところ、政を疎かにする王が続き、地は恵みを蓄積できないでいる。先王の在位の間にも、官吏は専横を極め、民は|蹂躙《じゅうりん》されてきた──民を|虐《しいた》げていた郷長のような、そんな|輩《やから》が横行していたし、それはまだ根絶できてはいないと思う。しかも先王が斃れて後、偽王が立って国は荒れた。慶はやっと復興に乗り出したばかりだ。今、市中で休んでいる民のほとんどは、良い時代を経験したことがない。常に国は治まらず、慶は波乱多く貧しかった」
「……はい」
「私は、そういう民の全てを不憫に思う……」
 苦吟にか、低い声は震えている。
「同時に、戴の民も哀れだ。戴の現状は慶よりも|酷《ひど》い。気候も厳しいその上に、偽王の圧政と災異があれば、どれほどの苦しみだろう。偽王は取り除かれねばならないし、正当な王と宰輔が王都にいなければならない。──私は」
 |李斎《りさい》は残された片手を伸ばし、景王の手を探った。
「それ以上は──どうか。兵を動かしてはなりません。景王が御自ら兵卒を率いて他国に干渉することは慶を沈める大罪です」
「……李斎」
「お許しください。戴を憐れむあまり、私は罪深いことを考えました。……けれども、それはいけません。景王は慶の国主でいらっしゃる。慶の民に対する以上の哀れみを、戴に施されてはなりません」
 ──|花影《かえい》、|貴女《あなた》が正しい。
 李斎の手を握り返す強い力があった。
「決して戴を見捨てようとは思わない。できる限りのことはする。してみよう、と延王にもお願いしてみるつもりでいる。……けれども、できるかぎりのことを超えたら許してもらいたい。私は、ただの一時も良い時代を経験したことのない景の民に、もう一度混沌を覚悟せよ、とはとても言えない……」
「そのお言葉で十分です」
 李斎は微笑んだが、本心を言えば、見捨てないでくれ、と|縋《すが》りたかった。だが、それだけは、できない。目の前の人物は、慶にとって必要な王だ。慶の民からこの王を取り上げることだけは、してはならない──。

   2

 陽子が|客庁《きゃくま》を出ると、|庭院《なかにわ》に面する回廊に腰を下ろして、大中小、三つの人影が待っていた。
「……何をしているんだ?」
 陽子が声を上げると、一人が|弾《はじ》かれたように立ち上がる。
「陽子、中で何を話してきたの? まさか……」
「なんで|祥瓊《しょうけい》がこんな時間に、こんなところに」
「|鈴《すず》が呼んでくれたのよ。ずっと探していたんだから。陽子が現れて、人払いをしてあの人の|牀榻《ねま》に入っていった、って。──何を話したの? まさか、大変な確約を」
「したよ」
 陽子が言うと、祥瓊は小さく息を呑む。対して、その足許に坐った鈴は、ただ小首を傾げていた。
「分かってるの? それは──」
「うん。だから、できる限りのことで許してもらう、そう確約してもらった」
 |祥瓊《しょうけい》は大きく息を吐いてその場に座りこんだ。
「……驚かせないでよ……もう」
 鈴が呆れたように祥瓊を見た。
「だから、陽子は慶を見捨てるほど|莫迦《ばか》じゃないわ、って言ったのに」
「私にはそれほど利口に見えなかったの」
 酷いな、と苦笑しつつ、陽子は祥瓊の肩を叩く。そうこう言いながらも、|景麒《けいき》や他の誰かに|報《しら》せ、あるいは|牀榻《ねま》に踏み込んでくるような真似はしないでいてくれた。
「それで、|虎嘯《こしょう》は?」
 問うと虎嘯は、大きな体を小さく丸める。
「いや……その、俺は陽子の護衛が仕事だからな」
 陽子は笑い、
「では戻ろう。今日は一日、逃げ廻っていたから、|溜《た》まった仕事を片づけないと。……すず、悪いけど、李斎を頼む」
「任せておいて」
 手を振る鈴に笑って、祥瓊と虎嘯を連れ、回廊を戻ると、途中の|路亭《あずまや》に今度は二つの人影があった。
「……ここで何をしているのか、と訊くべきかな?」
 足を止め、呆れて問うた陽子に、大小二つの人影は顔を見合わせる。
「いや……|儂《わし》は月を眺めておっただけでな」
 |遠甫《えんほ》は言って、|浩瀚《こうかん》を見る。浩瀚は、
「私は主上をお捜ししておりました。疲れたので太師に付き合っていただけですが」
 なるほどね、と陽子は四人の顔を見渡した。
「……心配は要らない。当の李斎が、兵を出してはならない、と言ってくれたから。分かっていても他に助けを求める術がなかったということだろう。できる限りのことはすると確約したけれども、できる限界を超えたら許して欲しいと言ったし、李斎もそれでいいのだと言ってくれたから」
 遠甫も浩瀚も、|安堵《あんど》したように頷いた。
「なので太師と|冢宰《ちょうさい》には大いに働いてもらわなければならない。天の許す限度の中で、戴に何をしてやれるだろうか。至急調べて奏上せよ」

 翌日、この件に係わりのある官吏の間で|有司議《ゆうしぎ》がもたれた。それは夜を徹して翌日にまで及んだが、これという解決策を見つけ出すことはできなかった。
「主上の例から考えて、とにかく泰王を慶にお連れすること、これが大前提です」
 |浩瀚《こうかん》は言う。相変わらず涼しげな顔をしていたが、どことはなしに|憔悴《しょうすい》したふうが見えた。
「しかしながら、泰王が|戴《たい》を脱出された様子がございません。もしも戴をお出になられたのであれば、どこかへ保護をお求めになるでしょうし、ならば噂なりとも聞こえてきそうなものです。それがない以上、未だ戴におられるのだとは思いますが」
「確認する方法はないのだろうか?」
 陽子は言って、|積翠台《せきすいだい》に集まった面々を見渡した。口を開いたのは、延王尚隆だった。
「|鳳《ほう》を使って直接諸国に問い合わせるのが早いだろうが、必ずしも王に保護を求めたとも限らない。戴を脱出した臣下や、かつての同輩、知古などを頼り、阿選を恐れて身を隠しているのであれば、問い合わせて分かるものだとも思えないが」
 浩瀚は頷く。
「いずれかの王──国に保護を求められるのであれば、|雁《えん》を|措《お》いては考えられません。近隣随一の大国であり、|虚海《きょかい》を挟んだ対岸です。しかも泰王は延王と|誼《よしみ》がおありになり、国交もおありになる。他国に保護を求められるのであれば、まず雁だと思われますが」
「そうか……」
「官の言の一致したところでは、他国の知古のところに身を寄せておられるということも、ほぼ考えられないだろうと。泰王は武勇のお方です。しかも政変からは六年もの歳月が経っています。仮にも将軍として名声のあった方が、阿選を恐れて六年もの間、ただ隠れているとは思われず、ただ隠れるのでなければ、知古の許に身を寄せてそれでよしとなさるとは思えません」
「だろうな……。一旦は知人の許に身を隠したとしても、戴をどうにかするためには、所在を明らかにして戴の民を集めるなり、せねばならないわけだし……」
「そういうことです。おそらくは泰王は未だに戴におられる。ただし、李斎殿がその所在を知らなかったことからしても、どこかに捕らわれているか、あるいは期を|窺《うかが》って潜伏しておられるかのどちらかであろうと思われます。前者のほうが可能性は高いでしょうが、いずれにしても、泰王を保護するためには、まず戴に乗り込んで泰王をお捜しするところから始めねばならず、これは天の摂理に抵触する可能性があります」
 陽子は考え込み、
「捜すだけなら、軍勢は必要ない──これはどうだろう。私か、あるいは誰かを勅使として立て、最低限の手勢を連れて戴に入る。個人的にとはいえ、景麒が訪問したことがあるのだから、私が戴を訪問すること自体は変なことではないだろう? 訪問するとなれば手勢を連れて行くのも当然のことだし、行ってみたら肝心の泰王がおられないので捜す──ということでは」
 浩瀚はちらりと陽子を見る。
「それならば天のお|目零《めこぼ》しを頂ける可能性があるのではないか、と言う声もありましたが、なにぶん定かではないうえ、主上に万一のことがあれば慶にとっては大事です。これは可能性としてないものにしようと官の意見が一致しましたので、不可能でございます、とお答えしておきます」
 その場にいた麒麟の一方は溜息を落とし、もう一方は声を上げて笑った。陽子も苦笑しながら、
「……一応、不可能だと言うことで聞いておく。だが、すると?」
「打つ手があるとすれば、泰台輔なのではないかと。|李斎《りさい》殿の証言によれば、台輔がお姿を消された時、鳴蝕があった様子、ならば泰台輔は|蓬莱《ほうらい》か──さもなければ|崑侖《こんろん》に流されたと考えることができます。台輔を捜すことには問題が無かろうと。ただし、実際にどうやって捜すのか、という問題がございます」
「問題なのか?」
「まず、蓬莱に渡ることのできる者には限りがございます。神籍または伯位以上の仙籍をお持ちの方に限られる。しかも、主上にお聞きした限りでは、蓬莱にせよ崑侖にせよ、大量の人員を派遣して手当たり次第に捜すことができるような場所でもございませんでしょう」
「それは……どうだろう」
 首を傾けた陽子に、六太が口を挟んだ。
「大々的な捜索はできない。それは考えないほうがいい」
「まあ……難しいとは思うけど」
「難しい以上だ。伯以上の仙を|掻《か》き集めて人員を確保することは可能だろう。だが、胎果でない連中には、あちらで確固とした存在でいることができない」
 陽子は瞬く。つまり、と六太は苦笑した。
「蓬莱はぜんぜん異質な場所だ、ということなんだ。本来は混じってはならない世界だ。それが混じってしまうのが蝕で、その蝕によって|卵果《らんか》が行き、人が来る。やってきたのが海客であり、|山客《さんきゃく》だ。海客は蓬莱からやってくる。ほとんどの場合、大陸の東に流れ着く。|海客《かいきゃく》はこの世界の民と何ら変わりのない人間だし、言葉が通じないことを除いては、なるきり民と見分けがつかない。そうでない者が見ても何の違和感も催さない。──だろ? 本当に、単にあちらの人間がこちらに来ただけ、という体裁だな」
「ああ……そう、確かに」
「だったら、こちらの人間も、あちらに流されることがあっても良さそうなもんだ。だが、実際には、こちらの人間は、一部の特殊な者を除いて、あちらに渡ることができない。流されて行くことができるのは卵果だけだ。まだ形を持たない人だけ、ということになる」
「形がない?」
「そう。命はあるが、まだ形がない──そういう場合でなければ、あちらに渡ることができないんだ。特例はあるものの、こちらとあちらはそういう関係にある。来ることしかできないんだ。行くことはできない」
「でも、|景麒《けいき》は実際に渡って|蓬莱《ほうらい》に来たわけだし」
「そう。麒麟は渡ることができる。伯以上の仙、あるいは神籍に入ったものは渡ることができると言われている。だが、実際のところ、この身体でぽんと向こうに渡って、この身体でいられるのは、神籍にある|胎果《たいか》だけだと思ったほうがいい。景麒が渡ったとき、どうだった?」
 六太に問われ、景麒は頷いた。
「延台輔に言われていた通り、私は|歪《ゆが》んだ者でした」
 歪んだ者、と陽子は問い返す。
「私は主上を捜しに蓬莱にまいりました。その前に延台輔に相談したのですが、その時に歪んだ者になるだろう、と言われました。その時にはよく分かりませんでしたが、実際に行ってみて分かりました。確かに──私は、私として確固としてあることができませんでした」
「さっぱり……分からない」
「言葉にするのが難しいのです。蓬莱の民は、得てして私が見えないようでした。見えても幻のように見え、あるいは別のものに見えていたようです。きちんと見える者もいるようでしたが、その場合にも、声が聞こえなかったり、あるいは言葉が通じなかったりするし、逆に声しか聞こえなかったりするのです。人の形を保っていることが難しく、ひどく不安定でした。唐突に獣形に戻ろうとしたり、|遁甲《とんこう》する時のように|溶《と》けてしまおうとするのです。私の存在がこちらにいる時のように、きちんと形を保つことができたのは、主上が近くにいた時だけでした」
「そうだったのか……?」
 陽子が驚いて訊くと、景麒は頷く。
「確かに、あちらは我々がいてはならない世界です。──そう、絶えず世界が、我々の存在を拒もうとするのです」
 六太は頷く。
「胎果でない連中は、向こうで確固として存在することが難しい。|幽鬼《ゆうき》のようにしか存在できない。長時間しっかりした形を留めていることができず、なんとか形を保っていても、影のように曖昧で不安定だ。王や麒麟でさえそうだから、伯位の仙程度では、それがもっとひどい。しかもあちらは、こちらの存在を知らない。そこに得体の知れない幽鬼じみたのが大挙して行けば大騒ぎになるぞ」
「そうか……」
「しかも、もしそれを強行することにしたとしても、泰麒の顔を知っているわけじゃないだろう。たとえ李斎に似顔絵を描いてもらっても、六年も経ってるし、泰麒は胎果だから、おちらでは姿が変わっている」
 陽子は首を傾げた。
「確かに私は、こちらに来た時に見た目が変わったけれども……それは、もう一度あちらに戻るとどうなるんだ?」
 戻るな、と六太は|素《そ》っ|気《け》なく言った。
「胎果は異界の女の胎から生まれるだろ。生まれた時には、父母に似た肉の殻を被ってくる。それを|胎殻《たいかく》と言うらしいんだが。こちらに戻れば、本来の──天に定められた姿形に戻る。麒麟ならこの、きんきらした髪になるわけだ」
「そうだよ……ね。あちらで生まれつき金髪のはずがないし」
「そう。理屈はよく分からないけど、これは同じ皮の裏表らしい。そういう感じなんじゃないかな。蓬莱に戻ると、蓬莱の時の姿に戻る。単純に戻るだけなら、俺なんかとっくによぼよぼの爺を過ぎて白骨になってるはずだけども、そういうこともない。こっちで成長が止まった時に胎殻のほうも歳を取るのをやめたみたいだな。若干のずれはあるみたいだけど、まあよく似た範疇だと思って間違いなさそうだ」
「……ということは、たとえ李斎を連れて行っても、泰麒の顔が分からない?」
「そういうことになる。ただ、麒麟なら麒麟の気配が分かるから。泰麒が卵のとき蓬莱に流されたろ。それを蓬莱で見つけたのは俺なんだよな」
「延麒が?」
「うん。遊びに行ったら──あ、いや。探しに行ってたんだよ。そしたら麒麟の気配があった。それで蓬山に|報《しら》せて、蓬山から迎えが行ったわけなんだが」
「では、麒麟ならば捜すことができるわけだ」
「できるけど。ただ、気配が分かると言っても、そのへんにいれば分かる、って程度だから。しかもあのときは、蝕の抜けた方向から、蓬莱にいるだろうってことは分かっていたんだが、それでも十年かかってる。今度の場合は、蓬莱と|崑侖《こんろん》のどちらに抜けたかすら分からないし、本当にあちらに渡ったとも限らない。俺と──たとえ景麒が手を貸してくれたとしても、たった二人じゃ何年かかるか分からないぞ」
「では、それが十二人なら?」
 陽子は何気なく言ったが、これには唖然としたような沈黙が返ってきた。
「あ……空位の国もあるから、十二麒麟全員が揃うことはないだろうけど。……何か変なことを言ったか?」
 尚隆は溜息をつく。
「陽子、こちらでは他国に干渉をしないのだ。それがこちらの流儀だからな。自国のことは自国で処断する。他国に協力を求めることはしないし、協力することもない」
「延王は私に手を貸してくれましたよね?」
「それは俺が胎果で、変わり者だからだ」
「度外れたお|節介《せっかい》なんだ」
 六太は|半畳《はんじょう》を入れて、
「……だが、本当にそういうものなんだ。こちらでは国同士が協力して何かを行うということをしない。一時的に他国に援助を求めることがあっても、あくまでも国と国との関係の中で行われることだし。そもそも隣国であっても、必要がなければ国交すら持たないような世界だからな」
「じゃあ、十二も国があるのに、団結して何かをやったことはないのか?」
「歴史で見る限り、ないと思うぜ」
「それは、してはならないことだからなのか? 兵を他国に向かわせてはならないみたいに罰に当たるから?」
 さあ、と六太は尚隆と顔を見合わせた。
「確認したことすらないのか? ……|呆《あき》れた話だな」
「……それは、そうかも」
「だが、他に方法がないだろう。泰王は自ら戴を脱出できないのだろう。だからこそ今まで何の噂も聞こえてこない。泰麒もあちらに流されるかどうかして、自力で帰還はできない。できないからこそ、今まで戻ってきていないんじゃないのか? 泰王も泰麒もいないで戴の民に何ができる? 李斎のような者がいても、民を組織して兵を挙げることすらできないできたんじゃないか。戴は自分の力で自国を救うことができない。だったら他国が手を貸すしかないんだし、麒麟の数が足りないと言うなら、諸国に依頼して手を貸してもらうしかないじゃないか」
 そもそも、と陽子は呟く。
「戴で政変が起こった時、|可怪《おか》しいとは思わなかったんですか。|鳳《ほう》が鳴いてもいないのに王が交代するなんて、どう考えても不自然でしょう。なのに戴の様子を|窺《うかが》おう、何が起こったのか確認しようとはしなかったんですか?」
「勿論、したとも」
 尚隆はいったが、六太はあっさり、
「その当初だけな。公式の使節と非公式の手勢と、それを戴に向かわせて、|鴻基《こうき》の中に入れない、中を窺い見ることができないとなると、さっさと静観を決め込んだだろう。以来、そのまま放置してきたんだ。言っておくが、俺は何度も、戴がどうなっているのか調べろ、救済方法を探せ、と進言したぞ」
「なるほどな」
 陽子は微かに笑む。
「緒戦は他国のこと、なるようになれ、というわけだ?」
 ぎょっとしたように息を|呑《の》む気配が室内に満ちた。主上、と|諫《いさ》めるような小声は景麒のもの、|浩瀚《こうかん》も|遠甫《えんほ》も驚いたように硬直している。尚隆は不快そうに眉を|顰《ひそ》めた。
「景王には言葉が過ぎないか」
「けれども事実じゃないのですか? 静観していればそのうち|泰果《たいか》が|生《な》って、それで全部が振り出しに戻って雁は安泰でいられる、そういうことなんじゃあ?」
「ま、そういうことだな」
 尚隆より先に答えたのは六太だった。
「六太」
「他国に干渉しないのが慣例だと何だと言って、そんなもんは言い訳だろうが。実際、陽子のときには呆れるほどお節介を焼いたわけだからな。尚隆は、手を出すきっかけを見つけられなかったんだ。泰王も泰麒もいない、誰も助けを求めてこなかったから。あえてそのきっかけを見つけようとするほど、熱心じゃなかった──泰と雁の間には|虚海《きょかい》があるから」
 尚隆は何かを言おうとしたが、六太はその前に大きく手を振った。
「つまんない言い訳をするなよな。結局のところ、お前にとって問題なのは|荒民《なんみん》なんだ。他国から荒民が流れてくれば、雁の国情に係わる。だから慶にしろ|柳《りゅう》にしろ、動向を気にするし、手助けもする。だが、戴との間には虚海が控えている。あれを渡って雁に流入してくる荒民は少ない。地を接した慶の場合に比べれば、ものの数には入らない。静観しても、とりあえず雁の根幹が揺らぐことはない」
「雁大事と言うわけだ」
「そういうこと」
「……俺は雁の王だぞ」
 尚隆は声を荒げる。
「無論、雁大事だ、それが悪いか。俺はそのためにいるのだからな」
 な、と同意を求めるように六太は陽子を見た。
「こいつは、ご覧の通りだ。お前だけでも、何とか努力をしてやってくれないか、陽子。俺にできることは協力する。どうにかして、ちびを連れ戻してやりたいんだ」
「ちび」
「こんなに小っこかったんだ。気の小さなやつでさ。──|誼《よしみ》がないわけじゃない。あったのは数えるほどだが、まだ生きていて辛い思いをしているなら、助けてやりたい」
「できる限りのことはする」
 尚隆は卓を叩いた。
「慶はまだ安寧にほど遠い。それを景王自らが、自国を措いて他国のために労を割くというのか? それこそ思い違いだぞ」
「|胎果《たいか》の|誼《よしみ》だ、放っておけない」
「胎果の誼で忠告してやる。お前はそんなことをしている場合ではない」
「では、|雁《えん》なら動いてくれるのか?」
 尚隆は少しの間、言葉に詰まり、
「ええい、何から何まで──俺を何だと思っている! 俺は確かに雁の小間使だが、他国の用まで片づけてやる義理はないのだぞ! 雁だけでも問題は山積みしておるんだ、それを|棚上《たなあ》げして、泰を助けろと雁国王の俺に言うのか!」
 陽子は六太を見た。
「延麒、私が何とかがんばってみる。──なに、慶の復興は若干遅れるかもしれないが、民には雁に流入すれば、お優しい延王が養ってくれると言っておこう」
「──陽子!」
「ああ、そうだ。いっそのこと王師を編成して、安全に民を雁との国境まで送れるよう、旅団を作ろうかな」
「そりゃ、名案だ」
「恩義のある俺に、脅迫まがいの真似をする気か」
「同じことだろう」
 陽子は失笑した。
「雁は北方で唯一、豊かで安定した国だ。北方の国々に何かが起これば、民は止めても雁を頼る。このまま戴が荒れ果てれば、戴の民の全ては、|筏《いかだ》を組んででも雁に向かおうとするだろう。妖魔や虚海がその妨げになっても、民にはそれしかないのだから」
 陽子は自分の両手を見下ろす。いつも、あまりに小さいと確認せざるを得ない、その掌。
「慶が他国のことを考えている状況にないのは確かだ。まだ復興の途中で、逆さに振っても他国のために割く余剰などない。だが、このまま戴を放置もできない。なぜなら、戴の民の行く末には、慶の民の行く末もかかっているからだ」
「……慶の民?」
「玉座は永遠ではないだろう? 私は慶を立て直すつもりでいるけれども、本当にそれができるかどうかは分からないし、途中で道を誤らない保証もない。私が|斃《たお》れた後、民がどうなるのか──それは戴の処遇にかかっている」
 言って、陽子は自国の臣──景麒と|浩瀚《こうかん》、そして|遠甫《えんほ》を見た。
「慶の復興さえままならないのに、泰を救っている場合か、とお前たちは言いたいだろう。それは私も承知している。けれども、私は泰を救う気でいる。できる限りのことはする。それは戴の民のためだけではなく、慶の民のためでもあると思うからだ。慶にも同じことが起こらないとも限らない」
「主上」
 景麒は|諫《いさ》めるような声を上げたが、陽子は首を振った。
「もちろん道を失う気などない。良い王になりたいとは思っている──本当に。けれども誠心誠意それを望めば、必ず結果がついてくるというものではないと思う。破滅するつもりで破滅した王などいないだろう。ましてや戴の場合のように、逆賊によって国を荒らされることもある。だから、私が|斃《たお》れたとき、あるいは私が道を失ったときのために、民を救済する前例を作っておきたい。王がいなくても民が救われるような道を敷いておきたいんだ」
 言って陽子は、唖然としたふうの尚隆、六太を見る。
「私が戴に労を|割《さ》けば、そのぶん慶の復興は遅れます。民は|焦《じ》れて慶を見捨てるかもしれない。慶よりも雁がいいと言って出ていく民を、止めることなどできはしません。先だってはついに|巧《こう》が倒れました。巧の北方の民も、やはり雁を頼らざるを得ないでしょう。そうやって巧が慶が戴が雁に覆い被されば、さしもの雁も荷が重いでしょう。雁一国で救済に当たろうとするならば、当然のことです」
 ずっと考えていたんです、と陽子は呟く。
「それは本当は、今のことじゃなかったのだけど。もっと慶が落ち着いて、国に余裕ができて、それなりの国になったら、他国の|荒民《なんみん》を救済するための方法を考えようって。国が荒れたから民は逃げ出す、逃げ出した先の国は|已《や》むを得ず抱え込む──そうではなく、もっと積極的に、荒れた国を支援し、民が国を逃げ出さなくても次の王が立つまでの間を|凌《しの》ぐことができるような、そんな方策はないだろうか、と」
「陽子……」
「せめて|義倉《ぎそう》があればな、と。各地に義倉がありますね? 飢饉や戦乱が起こり、民が物資に困ったときには義倉を開けて民に施す。──そういうものが国と国の間にもあればいいのに、と思っていたんです。どこかの国が負担を背負わなくても、諸国が余剰を貯めておいて、どの国にせよ、|荒民《なんみん》が出たときにはそれを開く。漠然とそんなふうに考えていたのだけど、李斎が駆け込んできたのを見て、どこかそういう場所も必要なんだな、と思いました。ここに行って助けて欲しいと訴えれば、他国が仲裁に入ってくれ、義倉を開けてくれる、そういう窓口が必要なんだと思ったんです。……|覿面《てきめん》の罪なんてものがあるとは知らなかったし、他国には介入しないという慣例があることも知らなかった。ものを知らないから、簡単に考えていたのだけれども」
「陽子は面白いことを考えるな……」
 半ば呆れたように六太が言う。
「私が考えたわけじゃない。これはそもそも、あちらにあった仕組みなんだ。延麒がいた頃にはなかったと思うけどね」
「へえ……」
「誰もやったことがないなら、やれれないものか試してみたい。諸国に依頼して力を借りることはできませんか」
 陽子は尚隆を振り返った。
「俺にそれをやれとぬかす気か」
「私がやっても構いません。もっとも、私のような青二才が言い出したのでは、どこの王も振り返ってくれないかもしれませんが」
 尚隆はむっつりと黙り込む。やがて、
「──大国、大国と勝手に祭り上げおって。先には戴が、つい先だっては慶だ。慶がやっと落ち着いたと思えば巧が倒れる。おまけに柳まで雲行きが怪しい。雁の周囲ばかりこうも次々と。俺は万能ではないぞ。雁は豊かだが|無尽蔵《むじんぞう》ではない。次から次へと周囲の国が乱れて、雁に倒れ込もうとしている。なぜこうも俺一人ばかりが背負い込まねばならん」
 吐き捨てる尚隆を、六太は呆れたように見た。
「あれ? 気がついてなかったのか、何でなのか」
「何だ」
 六太は、にっと笑う。
「そりゃ、お前が|疫病神《やくびょうがみ》だからさ」
 尚隆は盛大に顔を|顰《しか》めた。
「粉骨砕身して働いて、挙げ句の果てにこの報いか。……泰麒を捜す。俺が采配をすればいいのだろう」
「ありがとうございます」
 陽子は破顔し、一礼する。
「この借りは後々、必ず返させていただきます」
「いつの話だ」
「それは勿論」
 陽子は笑う。
「延王が|斃《たお》れたときに。雁が騒乱に巻きこまれる頃までには、慶を立て直しておくと約束します。安心して頼ってください」

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